この本の著者であるジョナサン・ヴァン・ネスさんの事は、わたしはこの本を図書館で見つけるまでは知りませんでした。
何となく気になって借りてみたのですが、「こんな本借りたんですよー。」とCafeのお客さんに話してみたら、「あっ、この人知ってるう。」と反応されたので、かなりの有名人なんですね。
そんな、アメリカ国内だけでなく日本の都市部でない一市民にさえ知られているほど有名人になった彼が、『最高の瞬間には犠牲にするものが必ずある』と知人から教えられていたことを身をもって経験したこと。
その犠牲によっていつしか心が病んでしまったこと。
そこから立ち直るために払っている努力、方法、成果などを実体験を通し赤裸々に公表してくれている本でした。
その方法を一言でまとめると、題名の『どんなわたしも愛してる』なんですね。
自分の中にはいろんな自分がいる。まるでワンボックスカーに乗って一緒に旅をしているみたいだと彼は書いています。状況に応じていろんな自分の中の一人が強引に運転席に座ってしまうようなものといった表現がされていました。
ある状況下に置かれると、急に「ポンッ!」とスイッチが入って別人格が出てしまう事ってないですか?わたしはあるんですよねえ、実に。それで周りに迷惑をかけることしばしばなんですが。
後で落ち着いたときに思い返してみると、「なんであんなこと言っちゃったんだろう…やっちゃったんだろう…」てな状況に陥るわけですね。
そうなんですよ、言っちゃった自分を、やっちゃった自分を、許せない自分がいる。
言っちゃった自分も、やっちゃった自分も、それを許せない自分も、ぜーんぶ自分の一面なのに、「許せない!」「このままではいけない!」「直さなきゃ!」「でも直らない…」をぐるぐると回り続けてる感覚ってないですか?
彼も多分そんな感覚に陥ったんだろうと想像します。
でもね、全部自分なんですよね、いっしょにワンボックスカーで旅してる仲間なんですよ。途中で追い出したり途中下車させるなんて無理無理。
だったら一緒に楽しく旅したほうがいいじゃない。運転交代のタイミングをベストな時にすればいいだけ。
でも、自分ではベストと思って運転交代したのに、相手にとっては気に入らなかったって時はありますよね、当然。
そんな事態が、有名になればなるほど出てくるわけです。
そんな事態をなるべく避けたい、と思うと安全対策をとるようになるんですよねえ。
嫌われないように、ポジティブな面だけ見せよう。ネガティブな面は隠しておこう。
そうすると、ポジティブな面にひかれて人は多く集まってきますが、不安はどんどん大きくなってしまうわけですね。「ネガティブな面を知られたら嫌われてしまうかも…」
そんな感情を『恥』というんだと彼は知人から学んだようですね。
そこで彼がとった行動は、自分の中のすべての自分をさらけ出すこと。
ポジティブな面もネガティブな面も全て知ったうえで、「それでもあなたのことが好き。」と言ってくれる人たちの中で安心して生きていけばいいじゃないか。それがうまくいってきている。みんなにもそのことをわかってほしい。
そんな気持ちが伝わってくる本です。
そのための第一歩が、自分の中のいろんな自分を、自分自身がまず愛すること。
『どんなわたしも愛してる』なんですねえ。
『隠しておきたい自分』がいる人は、読んでみてもいいかもしれませんね。